日記なのか何なのか…気侭に語る
※記事内画像はクリックで拡大……される事もあるとかないとか。
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■ 2024/04/20
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■ 2011/06/05
突発SS【ウルス家断絶の日】
FIVEのとあるキャラの過去話
キャライメージ崩壊しても責任は持てません。
楽しいお話ではありません。
キャライメージ崩壊しても責任は持てません。
楽しいお話ではありません。
*****************
【ウルス家断絶の日】
静かに佇み、静かに眺めていた。
少し寂れてしまったこの私の屋敷を。
何故、彼に声をかけたのか。
何故、屋敷に招き入れたのか。
何故…
なぜ、私は彼に聞いて欲しくなったのだろうか。
青年は私の向かいの席に静かに座り、私の話を聞いてくれた。
まるで懺悔でもするかの様に、私は手を組み額に押し付けながら絞り出す様に声を出した。
いや、これは懺悔なのだろう。
「この屋敷は近々売りに出す予定です。私は隠居するつもりです。」
静かに聞いていた青年が珍しく反応を見せた。
「ご子息に家督をお譲りに?」
「いいえ、子供はいないのです。妻とは随分と前に離婚致しました。家を絶とうと…」
そこまでで言葉を止めると、相手の反応を待った。
しかし予想していた反応は返ってこない。
何故?…そんな声を予想していたのに。
暫しの沈黙の後、予想していた「何故?」に答えるつもりだった言葉を紡ぐ。
「私には、子供がいたのです。妻と離婚した時に失ったわけではない…」
「誘拐された?」
思わず顔を上げた。
変わらず静かに見つめてくる目と視線がぶつかる。
「…世間では、そう言われております。」
私は耐えられずに視線を逸らし、また俯いた。
「私が子供を失ったのは…違うのです…私は…私は、子供を売ったのです。」
そう、私は子供を自ら手放した…
応えてはならない要求に、私は頷いてしまったのだ
弟が出来たとはしゃぐ息子。
とても優秀な自慢の息子だった。
でもある日、突然それは訪れた。
「その子を譲っていただきたい。」
見たこともない大金を示され、世間には知られぬ様に取引をしようと言われた。
下級貴族の私が一生かかっても得られないような金。
妻はまだ若かった。
子供はまた望めば出来る。
意地汚い私の心がそんな計算をする。
そして私は
「子供を売り渡したのですか?」
静かな声に、私は頷いた。
フッと鼻で笑う様な音が耳に響いた気がした。
当たり前だ。蔑まれても当然の愚かさだ。
「…そのわりには、裕福そうに見えませんね。奥方とも離婚されたとか。」
私は自重気味に僅かに笑った。
「子供がいなくなって…妻とは上手くいかなくなった。私はなにもかも虚しくなって、妻と別れました。あんなに欲した…子供を手放してまで手に入れた金も、全て妻に渡しました。」
「後悔している?せめてもの罪滅ぼし?」
私は首を横に振った。
「後悔はしている…でも罪滅ぼしではない。私は、失って初めてどんなに大切だったか気がついた。どうすれば子供達を取り戻せるのかと…。でも何もかもが遅かった。あの子達は深く遠い場所に行ってしまった。」
そう、あの子達は…光ない世界へ行ってしまったのだ。
「あなたは後悔している。今でも苦しんでいる。…フフフ、でも奥様は、いや、元奥様は他の男の下で気持ち良さそうに喘いでいましたけどねぇ。」
静かだった青年の声は変わったわけではなかったが、何故か背筋がゾクリと粟立つ様な気分になる。
「どうして、あなたは私に話そうと思ったのですか?」
しっかり答えなくては…そう思うが声が震えた。
「…あ、私は…」
どうして?どうして話そうと思ったのだったか…
ずっと6年近くも秘めていたこのことを…
「疲れましたか?」
穏やかな声にハッとする。
そうだ…そうなのだろう…
「…はい……。」
無様に声が震えた。
きっと私は望んでしまった。
疲れて、疲れて、疲れ果てて。
テーブルに何かが当りカタッと音を出した。
俯いていた顔を少しあげれば、机に置かれた銀色の仮面が目に入る。
驚きはしない。
昔、私はこれを見た。
あの子達を…全てを失ったあの日に。
更に顔を上げる。
青年がいたはずの場所に初めて見る顔があった。
黒い髪の凛々しい……少年だ。
「言われませんでしたか?誰にも言ってはいけないと。」
私は微笑んだ。
そう、そう約束をしたのだ。
私はじっと少年を見つめる。
初めて見る顔だと思った。
でも違う。
私は知っている、もっと幼い顔をした彼を。
微笑みの視線の先で、彼は音もなく立ち上がる。
洗練された動き、伸びた背丈。
それは、私が知らぬ彼だけど。
「楽になりましょう。疲れたあなたを解放します。」
私の頬に涙が伝った。
微笑みは消えない。
そのまま
私は全てを終わらせた。
満足そうに微笑みながら絶えた男を見下ろす。
「あなたが俺を闇の世界に売った。…許せると思う?」
テーブルに置いた仮面を手に取る。
もう一度、横たわる男を見遣った。
その男の手に、血塗れたナイフを握らせる。
「でも、あなたは苦しんでいた……それだけは、感謝するよ。」
仮面を付け身を翻す。
「結局、俺にも…カーンにも、もう表に戻る場所なんてありはしないんだ。」
逃げられない、闇からは。
もう一つの両親を消し去った今でさえ。
よほど強い光が照らしてくれない限り、出口なんて見つからない。
その日をもってウルス家断絶。
下級貴族が元妻を殺害後、屋敷で自殺。
そんな小さな話題がほんの一瞬だけ貴族達の間で話題となったらしい。
【ウルス家断絶の日】
静かに佇み、静かに眺めていた。
少し寂れてしまったこの私の屋敷を。
何故、彼に声をかけたのか。
何故、屋敷に招き入れたのか。
何故…
なぜ、私は彼に聞いて欲しくなったのだろうか。
青年は私の向かいの席に静かに座り、私の話を聞いてくれた。
まるで懺悔でもするかの様に、私は手を組み額に押し付けながら絞り出す様に声を出した。
いや、これは懺悔なのだろう。
「この屋敷は近々売りに出す予定です。私は隠居するつもりです。」
静かに聞いていた青年が珍しく反応を見せた。
「ご子息に家督をお譲りに?」
「いいえ、子供はいないのです。妻とは随分と前に離婚致しました。家を絶とうと…」
そこまでで言葉を止めると、相手の反応を待った。
しかし予想していた反応は返ってこない。
何故?…そんな声を予想していたのに。
暫しの沈黙の後、予想していた「何故?」に答えるつもりだった言葉を紡ぐ。
「私には、子供がいたのです。妻と離婚した時に失ったわけではない…」
「誘拐された?」
思わず顔を上げた。
変わらず静かに見つめてくる目と視線がぶつかる。
「…世間では、そう言われております。」
私は耐えられずに視線を逸らし、また俯いた。
「私が子供を失ったのは…違うのです…私は…私は、子供を売ったのです。」
そう、私は子供を自ら手放した…
応えてはならない要求に、私は頷いてしまったのだ
弟が出来たとはしゃぐ息子。
とても優秀な自慢の息子だった。
でもある日、突然それは訪れた。
「その子を譲っていただきたい。」
見たこともない大金を示され、世間には知られぬ様に取引をしようと言われた。
下級貴族の私が一生かかっても得られないような金。
妻はまだ若かった。
子供はまた望めば出来る。
意地汚い私の心がそんな計算をする。
そして私は
「子供を売り渡したのですか?」
静かな声に、私は頷いた。
フッと鼻で笑う様な音が耳に響いた気がした。
当たり前だ。蔑まれても当然の愚かさだ。
「…そのわりには、裕福そうに見えませんね。奥方とも離婚されたとか。」
私は自重気味に僅かに笑った。
「子供がいなくなって…妻とは上手くいかなくなった。私はなにもかも虚しくなって、妻と別れました。あんなに欲した…子供を手放してまで手に入れた金も、全て妻に渡しました。」
「後悔している?せめてもの罪滅ぼし?」
私は首を横に振った。
「後悔はしている…でも罪滅ぼしではない。私は、失って初めてどんなに大切だったか気がついた。どうすれば子供達を取り戻せるのかと…。でも何もかもが遅かった。あの子達は深く遠い場所に行ってしまった。」
そう、あの子達は…光ない世界へ行ってしまったのだ。
「あなたは後悔している。今でも苦しんでいる。…フフフ、でも奥様は、いや、元奥様は他の男の下で気持ち良さそうに喘いでいましたけどねぇ。」
静かだった青年の声は変わったわけではなかったが、何故か背筋がゾクリと粟立つ様な気分になる。
「どうして、あなたは私に話そうと思ったのですか?」
しっかり答えなくては…そう思うが声が震えた。
「…あ、私は…」
どうして?どうして話そうと思ったのだったか…
ずっと6年近くも秘めていたこのことを…
「疲れましたか?」
穏やかな声にハッとする。
そうだ…そうなのだろう…
「…はい……。」
無様に声が震えた。
きっと私は望んでしまった。
疲れて、疲れて、疲れ果てて。
テーブルに何かが当りカタッと音を出した。
俯いていた顔を少しあげれば、机に置かれた銀色の仮面が目に入る。
驚きはしない。
昔、私はこれを見た。
あの子達を…全てを失ったあの日に。
更に顔を上げる。
青年がいたはずの場所に初めて見る顔があった。
黒い髪の凛々しい……少年だ。
「言われませんでしたか?誰にも言ってはいけないと。」
私は微笑んだ。
そう、そう約束をしたのだ。
私はじっと少年を見つめる。
初めて見る顔だと思った。
でも違う。
私は知っている、もっと幼い顔をした彼を。
微笑みの視線の先で、彼は音もなく立ち上がる。
洗練された動き、伸びた背丈。
それは、私が知らぬ彼だけど。
「楽になりましょう。疲れたあなたを解放します。」
私の頬に涙が伝った。
微笑みは消えない。
そのまま
私は全てを終わらせた。
満足そうに微笑みながら絶えた男を見下ろす。
「あなたが俺を闇の世界に売った。…許せると思う?」
テーブルに置いた仮面を手に取る。
もう一度、横たわる男を見遣った。
その男の手に、血塗れたナイフを握らせる。
「でも、あなたは苦しんでいた……それだけは、感謝するよ。」
仮面を付け身を翻す。
「結局、俺にも…カーンにも、もう表に戻る場所なんてありはしないんだ。」
逃げられない、闇からは。
もう一つの両親を消し去った今でさえ。
よほど強い光が照らしてくれない限り、出口なんて見つからない。
その日をもってウルス家断絶。
下級貴族が元妻を殺害後、屋敷で自殺。
そんな小さな話題がほんの一瞬だけ貴族達の間で話題となったらしい。
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