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日記なのか何なのか…気侭に語る
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■ 2011/07/31   突発SS【ものおもう】
FIVEのとあるキャラの過去話

何か、いろいろ交錯して意味不明な感じに。
いつものことですが!!

*****************

【ものおもう】


 何が違っていたのか
 そんなに大して違いは無かったのかもしれない
 でも、感じ取った少しの違いは
 日に日に大きくなり
 今ではもう全くの別物だ


 兄や姉とは歳が離れていた。
 何でも、世継ぎの男児が一人だという事に不安を感じた家臣達から、もう一人男児をと望まれた結果、私が生まれたらしい。
 そんな経緯で生まれた私だというのに、姉は勿論、兄も惜しみなく可愛がってくれた。
 それは、幼い頃の微かな記憶ではあるが、私の心に刻み込まれている。
 兄も姉も、金色の髪に新緑色の瞳をした美しい方達だった。


 ふと鏡に映った自分の姿を眺める。
 相変わらす・・・・・・幼い。
 もう15なのに、まるで子供のようだ。
 背だってもっと伸びてきてもいいのに。
 そんな思いが兄の姿を思い起こさせる。
 兄はもっと背が高くて、男として美しい方だった。
 そこまで思い出した瞬間、目の前が真っ赤な色を映し出す。
 血に染まった兄・・・
 ゾクリと背に悪寒が走り、私は首を左右に振った。
 私は一度深く息を吐き、心を落ち着かせ振り返る。
「エリザ様、お召し物はこちらでよろしいですか?」
 その問いかけに、この世で一番愛おしい人が笑顔で答えた。
「お前の見立てなら何でもいい。」
 ねだる様に、綺麗な腕が私に向かって伸ばされた。


 初めてお会いしたのは8つの頃。
 戦利品の一つである奴隷の中に私は押し込められていた。
 それでも、何人も不必要として「処分」された者達よりは運が良かった。
「随分と小綺麗なのが混ざっているな。」
「ああ、お稚児さんだろ、そいつは。」
 否定も抗議も出来ない。
 それはまぎれも無い事実。
 何度も思った、兄が羨ましいと。
 私も、あの時に兄の様に・・・死にたかった。
 今度こそ、死ねるのではないかと期待したのに・・・。
 男の手が自分に伸びてくるのを無表情に眺めながら、兄の死んだ姿をずっと思い出していた。
「これこれ、怯えておろう?」
 聞こえてきた女性の声に、現実に戻された。
「エリザ様、こんな所にいらしては!」
 驚く男達の声に被せる様に、面白そうに笑う声が響く。
「何か面白いものでもありはしないかと思ってな。自分で足を運ばねば掘り出し物が見つからん。」
「陛下に怒られますよ!」
「心配するな、父上には上手くおねだりをする。」
 驚いた表情で座ったまま見上げていた私の前に、その人は膝をつき笑いかけた。
「私が誰だか分かるか?」
 不意の質問。
 少し間を置いて、私はか細く声を出した。
「ムゲンカ王女」
 その答えに楽しそうに笑顔が咲く。
「ほれ、掘り出し物だ!賢そうな顔をしていると思ったのだ。」
「は?」
 呆れた様な顔の兵士にその人は不満そうな顔をした。
「お前達は鈍いのぉ。この子は私とお前達の会話で私が国王の娘だとちゃんと理解したのだ。この状況下で冷静な判断だ。」
 そう言ってまたクルリと表情を変え、私に笑いかけた。
「私の奴隷になるのは嫌か?」
 思わず目を見開いて見つめてしまった。
 今までと変わらない。
 奴隷になれと言われているのに。

 どうして、泣いてしまう程に嬉しかったのだろう。


「考え事か?カミル。」
「いえ・・・。」
 視線で、指で、促された口づけに応えようとした時、不意に扉が開く。
 金髪の美しい男の姿が現れる。
 ムゲンカ国王。
「父上、何事ですか。」
 エリザ様が訝しそうに訊ねる。
 国王は無表情に見つめた・・・私の姿を。
「・・・下がれ、奴隷。」
 その声に、一瞬身が凍り付いた。
 しかし、すぐに従い扉へと行く。
 国王の命令は絶対だ。
 出る間際、お辞儀をして扉を閉める時に、怯えた顔がすがる様に私を見つめていた。
 廊下で暫く立ち尽くす。
 どうして今、あの光景が浮かんでくるのか。

 泣き叫ぶ姉の声。
 血に染まった兄の姿。
 男達の獣の様な顔。

 一歩、足を動かす。
 二歩、歩き出す。
 三歩、足が急ぐ。
 私は夢中で廊下を足早に進む。
 曲がり角、衝撃を受け倒れそうな所を支えられた。
「どうした?」
 短い一言。
 大丈夫かではなく、普段と違う私の様子に疑問を投げかける。
「・・・エート様・・・エリザ様が・・・国王が・・・」
 目を見開いたエート・マテラが廊下の先を見た。
「分かった。大丈夫だ。」
 そんな一言を残し、走り去って行く。
 愛おしい人と同じ髪の色をした人。
 それが、私がその人を見た最後の姿だった。



 数日後、エリザ様が新たな国王に即位した。

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